夢流し──満月の夜に夢を手放し、新たな夢を迎える
旧暦1月14日の夜。「夢流し」の儀式が行われます。夢流しとは、心や頭の中に蓄積された夢を天へと返し、内なる貯蔵庫を空っぽにすることで、新しい夢を迎え入れる準備を整える儀式です。

夢とは何か?
夢にはさまざまな側面があります。
- ひとの願い(夢)
- 日常の出来事を整理する心と体の仕組み
- 潜在意識や天からの声、メッセージ
- 土地の霊力と調和をとるための調整機能
そして、月は天の門。
満月の夜にはこの門が大きく開くとされていて、その門を通って、夢を乗せた船が流れていきます。
夢流しと宝船

夢流しの儀式で描かれる舟の絵。実は宝船の原型ともいわれています。
お正月に縁起物として飾られる宝船。もともと何も積まれていない空っぽの船が起源でした。(枕の下に敷いて、夢を乗せるために空っぽだった)
時代が進むにつれて、枕の下に敷くものから、飾るものへと変化し。飾るのならばと、神様が乗る縁起のよい宝船へと姿を変えていきました。
かつて、戦前までは大晦日や節分の時期に「宝船売り」が街を歩き、枕元に飾るための宝船の絵を売っていたそうです。宝船の絵には回文歌が添えられ、その歌を三度唱えて寝ると、吉夢が見られるといいます。
参考資料:小さな資料室 資料28「長き夜の……」
回文歌
ながきよの とおのねぶりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな
(長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り舟の 音のよきかな)
夢流しの方法
夢流しは、初夢(1月2日)、節分(2月3日)にも行われることがあります。とくに冬の間は、魂の動きが静かになる季節。この時期に、古い夢をそっとすくい上げ、新しい夢と混じらないように整理し、満月の夜に天へと送り出します。
夢舟を描く
儀式に使う「夢舟」は、まじない絵として紙に描かれます。京都のとある地域に伝わる夢流しの行事「夢流しの鏡の舟」の節会に参加してきたので、そのやり方をここではお伝えします。(わたしの育った地方では、〇(円)を書いて「舟」としていた)
- からっぽの舟を一筆書きで描く
- その舟を円で囲むように、左右から仮名で回文歌を書く
回文を仮名で左右に。鏡文字で書くことは、夢をのせる空っぽの舟を永遠の中にとじこめる意味を持ちます。(どこからはじまり、どこで終わるかがみえない=永遠)

まじないをかける
こうして書き上げた夢の舟。まじないの絵にまじないをかける。
- まじない絵を両手の上に乗せ
- 自分の夢や願いを思い起こしながら
- 顔の高さに持ち上げ、息を吹きかける(呪をかける)
- その夜、枕の下に敷いて眠る
まじない絵の舟に夢が移った翌朝以降、その絵を水に流します。(浄化する)
とはいえ、街の中に住んでいるといった時代背景?もあって、まじない絵を水に流せないことも多いです。水に流せないなら、火で浄化。
夢を移したまじない絵を、翌朝以降、キッチンのシンクで火に気を付けて燃やしてみたり、折りたたんで封筒に入れて封をし、燃えるゴミの日に出したりしてみる。
夢流しの意義
もっているものを取り除く、祓う、整理する、手放すことで「あき」はつくられます。あきは空白。モノのはいるすきとなる。すきあらば、真空ができ、そこに吸い込む力が生ずる。
だから、新しい年、新たな春、新しいはじまりを迎える前に夢流しがされていた。
この儀式は、夢を天へと送り、空白をつくることで、新しい夢が入る余地を生み出すものです。
あなたも今夜。小正月の前の夜に、月に夢を託してみませんか?
季節ごとに伝わる行事(おまつり)は、
星の動きと地上の動き(人の暮らし)をつなぐために続いてきた型。
その中には、人が古くから伝えてきた想いのかけらが残っています。
季節ごとに伝わる行事(おまつり)に関わることは、
じぶんのルーツと向き合う時間
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