昼過ぎに終わる予定でおでかけしたはずが、帰りが夕方になった。帰宅のラッシュが始まるまでに家に戻ろうと、少し足のうごきが早くなる。画像や動画、資料たちをお客さんに見てもらっていたタブレットは、もう虫の息。電池残量が20%を切った。かばんの中に入れてあった文庫本を手に取り、帰りの電車で読もうと思った。
帰りの電車は乗換駅まで1時間くらいだから、ちょうど文庫本を読み切れる……はずだったけれど、途中でメモをとりはじまったり考え湧いてきたりして読書は中断。気づいたら乗換駅についていて、びっくりして電車を降りた。
今日の晩ごはんはどうしようか。そういえば昼ごはんを食べ損ねたな。午前中のお話もまとめたほうがいいだろうし。いつ、どれをやってみようか。頭の中で順番つけたり、他の何かに変わっていったり。頭蓋骨の中でぐるんぐるんと思考がまわる。
スーパーマーケットに立ち寄って帰宅しようと駅を出た目の前で、青だった信号が点滅し、赤になった。赤になったことに気をとられて、頭の中がぽこんと空っぽになった。
立ち止まって目線を下げたら、足元に秋があった。ぽつんと、ひとつ。羽のように。
信号が青のままだったら気づけなかった、このグラデーションな葉っぱ。
考えのなかに埋まりこんだままだったら、見えなかった。
立ち止まって。足元を見たから、秋をみつけた。
ぐるぐるとした悩みも、心ぐるしい気持ちも。
とりあえず立ち止まって。自分の近くにあるものを見たら、何かをみつけられるかもしれない。
立ち止まるから、見える「何か」がある。
視点が変わる、次に目を上げた時にみえる景色が変わってくる。
赤だった信号が青になった。ススメ進め。歩き出した。