週末、友人たちと狩りに出る。狩りにそなえて、準備を始めた。
準備を始めたら、もさもさと増えてきた髪の毛が気になった。なんとなく行きそびれていたヘアカット。予約を入れることができたから、さっそく、髪をカットしてもらいに出かけた。
久しぶりに訪れた美容室。担当の方と秋の予定など話しながら、シャンプーをしてもらう。今日も、楽し気な音楽がかすかな音で流れている。頭を洗ってもらいながら、ぼんやりと。聞こえてくる音楽の旋律をおいかける。
洗い終えた頭にタオルを巻いてもらって、大きな鏡の前に移動。身体を落ち着かせてくれる、ここちよいイスに座った。
鏡越しに美容師さんと話をしながら、カットの方法を確認する。美容師さんは、もさもさと増えてきたわたしの髪をブラシで整えながら、長さや髪の癖を確認してくれる。
そうだ。今日、このあとの予約が入ってないようならカラーリングもお願いしてみよう。
夏の間、ずっと考えていた。秋には、色づいた髪ですごしてみたい。
つややかな巨峰のような、深い紫色がいいか。それとも、深い青色がいいか。
突然、カラーリングしたかったと思いだして聞いてみたのだけれど、今日はカラーリングもできるとのことだから。お願いしようと心を決めた。
「ブルーベリーみたいにしてください」
美容師さんの手が止まった。鏡の中で、わたしと目が合った。
「ブルース・リー?」
一瞬、美容室のなかが静かになった。後ろに流れている音楽だけが聞こえてくる。
え?
……爆笑。
「いきなり食べものの名前で、色のリクエストもらったのは初めてです」
「カンフーでもはじめたのかと思いました」
「ブルース・リーみたいなヘアスタイル、女性はなかなか言い出さないですよ」
美容室内で「ブルーベリー」は、まる聞こえ。みなさんからありがたく、突っ込みをいただいた。
ブルーベリーの(聞きまちがいの)おかげで、午後いちばんの緊張が解けた。これで夜も笑いながら頑張れそうだと、改めて、皆で大笑いになった。
気が抜けたこともあり、結局のところカラーリングはせず、カットだけで完了した。わたしの頭はブルーベリー色にはならず、もさもさ頭がスッキリと整った。
頭がスッキリ整ったら、狩りに出る気持ちも用意も整った。
週末は、狩りに出る。ブルーベリーを狩りに行く。