月おくれの旧暦での夏越の祓。夏越は6月末だけでなく12月末にも行われている大祓(おおはらい)のひとつ。それぞれに半年分の穢れ(けがれ)を祓い、改めて次の半年をむかえる行事。
6月にある夏越の祓は、気温が高いこともあり夏の疫病よけのまじないも兼ねるようになる。
水無月の夏越の祓する人は千歳の命延ぶといふなり
夏越の祓の唱えことば(詠み人知らず、題知らず。 拾遺和歌集より)
(みなつきのなごしのはらいするひとは ちとせのいのちのぶといふなり)
祓いのことばをききながら 三解き(みとき)をする古式の夏越
古くある宮廷行事のなかでされていたという大祓の方式での夏越の祓いへ参加してきた。
大祓いで聞く祓詞(はらえことば)は、セオリツヒメの名が出てくる唯一のものとして有名だ。人の中にある罪や穢れを、セオリツヒメをはじめとする女神様4人のお力を順々にかりて、清めるものがたりが祓いのことばとなっている。
罪や穢れと言っても、現代でいうところの犯罪としての罪や汚れという意味ではない。
ここでは、当時の人々の暮らしの中で悪いことであるとされた、農業をさまたげることとなるもの(水路の破壊など)、集落に暮らす時の人間関係のさまたげになると考えられるものを「罪」とした。
穢れとは「氣枯れ(けがれ)」。人のたいらかな中庸の様子ではなく、氣が落ちているようすや氣が上がりすぎているようすをさす。
場を開き地を鎮める
神社などでうかがい知ることのある大祓をはじめるまえに、剣を使った祓いがされた。その中で、四方の果てを道教の思想にあるものを使ってあらわしていた。どうやら、道教思想をもとにしたまじないのことばのよう。
長寿を願っている内容のような、地が鎮まるよう願っている内容のような。
剣がふられているその動作が、あまりにも美しく。そちらへ気をとられているうちに、まじないのことばを聞きもらす。
調べてみると「東西文部の祓い」のようでした(東文忌寸部献横刀時呪)。これは、世界がよく治まるようにと、天皇の長寿を願うまじないとのこと。
場への祓いを終えた後、人の祓いが続きます。
三解き(みとき)
今、神社などで祓いことばをきくときは、頭を低くして祝詞を聞いているだけで、特に何かを参列した人たちがするわけではない。
しかし、古くは。祝詞の中の祓い言葉の中で、三解き(みとき)と言われる動作をしながら祝詞の言葉を聞いていたという。
人かたに息を吹きかけ、胸の前にそっとあてる。これで、今じぶんの持つ穢れたちを人かたへと移し替える。
解き縄は、右まわりの縄と左まわりの縄で1組。その縄たちをそれぞれに解く。
縄を解くことは、ぎゅうと縮まっている人の心や体をほぐすことを意味する。氣が上がりすぎる方向へとぎゅうっと縮まるものを、逆向きにまわしながら解いていく。氣が下がりすぎる方向へと固めてあるものを、逆向きにまわして解いていく。
そして、最後に。
八はりの裂き布。祓詞にあわせて、布を手で一気に裂いていくことを7度繰り返し、布を八つのリボン状にする。裂いてリボン状になったものは、身体のうしろへ投げ捨てる。
布を裂く動作は、手の指に力を込めて「えいっ」と腕を左右にひく動作。これは、武道で気合を入れるときの動作にも似て、決意のような気迫のような決意のようなものが内に起き始まった。そして、布を裂く音による音の祓い。
いつもの祓詞をきくときには感じたことのない程の、あらたまった気配。場の緊張感。祓いきったし、すっきりと清められたと感じられたときでした。
玉ぐし捧げて直会(なおらい)
祓われて、清められた状態になってから、榊に自分のこころをのせて神様におそなえする。
祓われて清くなった今このときから、何を願うか。どこへ向かい進みゆくのか。
自分の中にある願いや誓いを神にみていただく場。
これから、自分がやろうとしていることへの誓いと出会えた人たちへの感謝をのせて、榊の枝をおそなえした(玉ぐしの奉納)。
それから、お待ちかね?の直会(なおらい)。
祭壇にお供えしていたお神酒を分け、和菓子「水無月」をみなでいただく。お茶もいただいた。
いつも感じることだけれど、節会としてこの場に集まる人たちと過ごす時間が、不思議な感覚わいてくるとき。神社の神事に参加するのとも違う、自ら祭祀執り行うときとも違う。
世界のなかにありながら、少しゆれて離れるような。日常の中にぽこっと開いた休憩所で、古いしりあいと会っているような。なつかしさを持つような、ゆったりとした時間。
祭主を執り行ってくださったのは、剣舞を指導されている桜月流の宗家。大祓の意味からご説明いただき、そのうえでの祭祀。
意味が分かったうえで、まつりの形をなぞると。その場に動く気配たちがぐんと強く広くなる。これからも勉強してゆこう。
夏越祭(なごしのまつり)のいわれ(愛媛県のとある地方)
わたしの実家のある愛媛県地方で「なごし」は心を静めるおまつりでした。
夏の暑い時期、おひさまの落ちはじまった夕暮れの頃。ぱちぱちと燃える火の中に人がたが鎮められるようすは、しずかで不思議と心おどる、とてもきれいな景色。
和し(なごし)
なごしは「和し」と書く。和やかにするのは、自分の心。
人とあらそう気持ちを鎮め、人をおとしいれようとする心を和ませるという願いを込めて。
なごしのまつりは、自分のうちにあるよこしまな心をはらい、改めて暮らしに向かうことをかみさまと約束するまつり。人がたに穢れをうつして、火で清める(おたきあげをする)ことをしていました。茅の輪もくぐっていたな。
地方によっては、7月末頃に茅の輪くぐり(夏越祭)をしている場所もある。近くの神社など、少し巡ってみては、いかがでしょう。
気分を改める効果あるかもしれません。