色(color)を楽しむ。

きれいな色が好き。そこから生まれる言葉が好き。

はじめて色にはまったのは色水作り。花びらや実や葉っぱをつぶして出てきた色を、水に移す。 ガラスのコップをもらって、そのなかで花びらや実をつぶし、いろいろな色水をつくった。

ただそれだけの遊びなのだけれど、見ている色がほんとうの色なのか、違う色に化けるのか、眺めてみるのが楽しかった。

はじめに見た花びらや実の色よりも淡く色が出る。どれほどたくさんの実をつぶしても、色水が実と同じ色にならない。がんばって色濃く作った色水も、時間がたつと色が抜けてしまうものも多い。

時間と共に色が変わること。それらが、とても不思議で、何度もなんども色水を作った。違う種類の色水を混ぜて新しい色水を作って遊んだ。

黒いのに澄んだあかい色水ができるヨウシュヤマゴボウの実

古いものがたりを本で読むようになって、はまったのが「かさね色目」。
着物を重ね着した時に袖口から見える色のかさなりに名前を付ける、平安時代の女房装束のあれ

かさね色目についた名前は、日常に使う色の名にくらべて美しく、やわらかな響きを持つ。そのおかげか、やまと言葉で表される色の名前と今は使われなくなった古い言葉や和歌にもはまった。

うらまさりこうばい、はじもみじ、まつがさね、くちは……
自然の中にある花や木を、季節によってあらわす言葉。

色目の名前からイメージされるのは水彩で描かれた風景。それも人の手で整えられた庭園のように秩序あるものではなく、里山のふもとでみるような素朴さを切り取ったような風景。

のちに、着物の表にうっすらと透けてできあがる色をあらわす「かさね色目」もあると知った。こちらは、表地と裏地を重ねて縫い上げたとき、裏地の色がうっすら透けて見える色をさす。 こちらも、同じように花の名がつけられていることが多いように思う。

かさねの色目つながりで友人もできた。その友人は草木ぞめをしながら、山のふもとに暮らしていた。インターネットがないころだったから、手紙のやり取りで季節の話をしたり、染め物のはなしをしたり。

手紙がきっかけになって、万年筆をもった。そして、万年筆のインクにはまった。

万年筆のインクは同じ青色のはずなのに、メーカーによって青の色合いが違っている。ほんの、ささやかな色の違い。

それでも、色合いの違うインクで書く手紙は、手紙が伝える内容すら変える力を持つ。
目に飛び込んでくる言葉の色合いが、文字どおり「変わる」のだ。

インクは、ありがたいことに消耗品で。手紙やノートを書けば書くほど減っていく。次のインクを選ぶ楽しみも増える。

使い終えた空っぽのインクびんと今つかっている中身の入ったインクびん。ずらりと窓辺に並べてあったようすは、ガラスの中に残っている色たちが日の光に透けてとても美しかった。あの様子を写真にでも残しておけばよかったと少し後悔している(実家を出ることがきまったとき、すべて、きれいに処分した)。

近頃は、色だけでなくイメージを名前に付けたインクが出はじめた。色の種類もうんと増えた。ますます、インクを選ぶ楽しみが増えた。けれども、ネットの普及もあってか、日常に使うインクの量は減り、少し悲しい。

先日、旅行中に立ち寄った文具店で、万年筆インクと同じ色目を使った色ペン(マーカー)をみつけた。セーラーさんのSHIKIORI―四季織― シリーズのマーカーだ。万年筆を使う機会が減り、インクを使う量も減ったからと買い控えていたインクと、同じ名前で同じ色目のマーカーたち。

そのマーカーにつけられている色の名前もまた美しい。
蒼天(そうてん)、夜桜(よざくら)、霜夜(しもよ)、常盤松(ときわまつ)……

使ってみたかったインクと同じ色のマーカーを手に取った。片方は固めの筆ペンで、もう一方は細字のサインペンがついているから、1本でふたつのかき心地。

手帳にメモを書き込んだり、マーカーとして色を付けたり。ちょっと筆で落書きしたり。
いろいろな用途に使えそうだから、インクを買うより買いやすいし、使いやすそう。

手元に色を置き、色の名前を楽しむ。色からはじまる景色を思い出す。景色につながる人の暮らしを思いおこす。
そんな時間を持てるから「色が好き」はやめられない。

筆ペンでのらくがきも、また楽しい。

▼和気文具さんのページで、セーラーさんの四季織シリーズのことをたのしく紹介されてあった。

マーカーの楽しみ方 – 和気文具ウェブマガジン
田村 洋子

”気配は答え。気配は本物。
気配を感じて、じぶんを生きる。”
*自分の才能や可能性を最大限に発揮するためのプログラム提供
●魂振=意識の周波数を上げる実践のマニア*瞑想と呼吸実践が日課

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