修学旅行で来たときは昼間にしか出歩かなかった気がするので、夜の京都を歩いてみたい。もし間に合うならば、紅葉のライトアップを見に行きたい。
そんなご要望いただいて、紅葉の夜間ライトアップを求めて京都の夜を歩いた。
紅葉のライトアップを京都で見たい
京都の紅葉ライトアップは、11月半ば以降から12月の第1週くらいで終えていることが多い。どうしても、日程の都合がつかないからと12月2週目に入っていた今回。ライトアップとタイミングがあうかどうか不安なまま京都駅に到着。JR京都駅にある観光総合案内所で「紅葉のライトアップが見られる場所があれば教えて欲しい」とたずねてみた。
寺社などの閉門時間を遅くして、特別拝観として開放し紅葉のライトアップを見せてくれる場所はいくつもある。けれど、その時期のピークは先週(12月第1週あたり)まで。やはり、ほとんどの寺社での特別拝観は先週日曜ですでに終わっていた。けれど、まだ特別拝観をやってくれている場所がいくつかあるからと、マップやちらしを使って、いくつか教えていただいた。
教えていただいた中から、今回の宿(四条河原町付近に泊まった)からも歩いて15分ほどの高台寺の紅葉を見に行った。
高台寺へ紅葉のライトアップを見に行こう
日が落ちて、空気はだんだん冷たくなる。四条河原町の交差点付近から歩いて出発。
八坂神社にも行ってみたいとのことだったので、夜の八坂神社を通り抜けていく。日が落ちてからの神社はすこし緊張する。昼間は人通りが多い神社境内も夜はしんと静まり、人の動きはあるけれど別世界に迷い込んだみたい。記憶に残っている情報だけを、ちょっぴり説明しながら通り抜けていく。
高台寺は八坂神社の南楼門から出て、旅館がならぶ通りを10分も歩けば着く。高台寺へと向かう道も、街灯のなかでぽっと浮かぶ庭木に足を止めたり、ちょっとした瓦屋根の模様がきれいだと写真を撮ったり。かなり、たのしく歩いていける。
そして、高台寺に到着。そこからは、もうため息しかでて来ない。
紅葉は、赤だけでなくオレンジだったり朱色だったり。いろいろな色合いをもって移り変わる木の葉たちは、ライトに照らされ透明な赤になる。
昼に見る景色とずいぶん、違う。紅葉の色と夜の藍色がとけあう。雲の間から見える月が空を灰色にし、それが隠れるとまた濃い藍色の空になる。一瞬ずつ、色を変え気配が変わる。
思い思いに歩きながら、撮影をしたり、ため息をついたり。なにか説明するよりも、今じぶんの見ている景色を感じることで手一杯。立つ場所によっても見えるものが変わり、動く景色に目を奪われる。
「どこからの景色がお気に入りでしたか。いいなと思った場所があれば、あとで教えてくださいね」声だけかけて、自分も高台寺の夜の景色の中に溶け込む。もう、空気になってしまおうか。そう思うほどに、光にとけている紅葉や木や建物と空と、風の流れと気配たちが素敵すぎ。
夜にみる景色は、日常離れしていて。いつも以上に感覚が鋭くなる。別の場にまぎれこんだような、日常のうらがわを同時に感じているような、妙な感覚がする。
それなのに、夜の空気を吸いこむ身体は確実に、今ここに存在している。鼻を通る息がつめたくて、手の先も少しずつ冷えていく。その感覚があるから、日常のなかで自分が存在していることを感じることができる。
頭の上側では、きらきらと灯るなにかが頭の中に詰まってとどまっているものをほぐし、重みを消してうらがわへと持っていく。自分がいるけれど、自分は消えていくような感覚。
もしかしたら、かぐや姫が月に戻るとき。地上を忘れていくときの感覚は、この消えていく感覚だったのかも……とっぴょうしもなく、そんなことを思った。
自分ひとりで、自分のためにでかけてみる景色も心に道をつけてくれる。
けれど、誰かと一緒に。だれかの望む道に同行させてもらえることは、自分の心にいつもとは違う道をつけてくれる。
一緒に行けてよかったな。案内させてもらえて、うれしかったな。
おかげさまで、こんな景色を見せてもらった。こんな感覚を感じることになった。
ほんとうに、ありがとうございました。
ご要望いただければ、また。同行させてくださいね。声をかけていただけること、たのしみにしています。
[情報]高台寺 ライトアップ(特別拝観)について
鷲峰山高台寺(公式ページあり)
住所:京都府京都市東山区高台寺下河原町526
- 2019年秋の特別拝観は、12月15日日曜まで
- 特別拝観の受付時間は9時から21時30分まで(拝観可能なのは22時まで)。
(通常の拝観受付時間は9時から17時までで17時30分まで拝観可能)
高台寺へのアクセス
京阪「祇園四条駅」から徒歩10分程度、阪急「河原町駅」から徒歩15分程度。